「自然信仰や原始信仰に関わる絶景は、どこがおススメでしょうか?」と質問されたら、「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部としてユネスコ世界遺産に登録された『熊野古道』は、間違いなくその答えの一つです。
例えば、和歌山県新宮市神倉に鎮座する、熊野速玉大社摂社の『
神倉神社』。





このご神体である
ゴトビキ岩などは、見て良し・登って良し・見下ろして良しの、三拍子拾った素晴らしい原始信仰を感じることができます。
また、滝自体をご神体とする『
那智の滝』は、だれが撮ってもカレンダーにできそうな写真がゲットできます。


ほとんど観光客が行かない、
平尾井薬師でもこの迫力です。

☆
一方、これらと反対で「
何もない空間」という、インスタ映えしない社(ヤシロ)もまた、日本の原始信仰を今に伝える重要な場所でした。
例えば、同じく世界遺産である福岡県の『
宗像大社』。

海の正倉院と呼ばれてきた『
沖ノ島』は、神社の歴史に興味のある人間なら誰しもが行きたい島ですが、その『沖ノ島』レベルの聖地が宗像大社陸上エリアにあります。
説明板に
「
宗像大神降臨の地」
と伝えられ、沖ノ島と並び宗像大社境内で最も神聖な場所。

その『
高宮祭場』というのが、ここです。


実質、何もない空間です。
沖ノ島と並ぶ聖地として、インスタ映えを狙って訪問した人には、残念ながら肩すかしでしょうね!(^^)!
☆
熊野に戻ります。
和歌山県のすさみ町から太間川を遡ると、JR紀勢本線の線路から離れたあたりの山中に、
『
地主神社』
が鎮座しています。

参道らしき山道を登ると、大きな露岩と石積みが現れました。

その上にあったお社は、これでした。



このシンプルさは『高宮祭場』と同じですね。
由緒ある神社とは、立派な社殿があり、背後に古代信仰の磐座などがあったりすると思いこんで訪問すると、そんな予想と現実との落差にめまいがしそうです(@_@;)
これはいったいどんなお社なのでしょうか?
これがその説明板です。

それにしても、きれいな山が見えるわけでも、すさみの海が見えるわけでもなく、あまりに地味な立地です。
大きな露岩があるから、それが磐座とされたのでしょうか?
そこでどうも気になるのが、地主神社の前を流れる太間川にある、この岩。


ひょっとすると、この巨岩も磐座だったのではないかという気がしてなりません。


もちろん、五百年・千年という昔から、この岩がこのままあったという証拠はありません。
洪水の折に上流から流されてきたか、山腹から落ちたのではないかという疑問も残ります。
熊野本宮大社の旧社地は洪水で流されたのだから、川の地形や景観は大雨で変わると思われる方もあるでしょう。
確かに1889年(明治22年)の大洪水で流されるまで、本宮大社の社地は熊野川の中州にありました。大鳥居の立つ「大斎原」がその場所です。

しかしこれは、明治以後の急激な山林伐採で山が荒れ、保水力が失われた結果として洪水が引き起こされたもので、健全な生態系の山林なら、そうそう洪水は起こりません。
この景観をご覧ください。



同じ和歌山県内ですが、川の中に立つ巨大な立石に祠が祀られ、橋が架かっています。
お参りのために橋を架けたのか、橋脚として立石を利用したのかは分かりませんが、少なくとも健全な川は、川の中の岩も安定していることが見て取れます。
☆
さて、『高宮祭場』は何もない空間でしたが、宗像大社全体としては『沖ノ島』もあり、陸と海がセットになっています。
規模は小さいながら、何もなさそうな『地主神社』もまた、川の中の岩上祭祀とセットで祀られていたのかもしれません。
というわけで、あまりまとまらない勝手な妄想的推理でした(^^♪
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