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足摺岬の龍王宮その②・性器信仰と龍宮信仰と環太平洋

「足摺岬の龍王宮・雄大な絶景と奇妙な風習」
の続きです。


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着物の裾をまくって・・・・

大絶景の中に鎮座する龍王宮(竜王神社)には、大変奇妙な祭祀行為がありました。

白亜のリゾートホテル、足摺テルメのスタッフ様が作っておられる
『足摺テルメスタッフブログ』より、その説明文をお借りします。

お参りをすれば、必ず大漁になると信じられている龍宮神社。
実は、地元の漁師の奥様たちが行う刺激的なお祈りがあるそうです。

どんなお祈りなのか気になりますよね?(^.^)

神社に神酒などをお供えし、とれた魚で作ったごちそうを並べ
大漁を祝う歌を歌いながら酒をふるまい宴を開く・・
と、ここまではよくある光景ですが
頃合いになると女性たちが「大漁!大漁!」の声と共に
着物のすそをめくり女性の大切なところを見せるんだとか!

この祈りをすることによって神様が喜び、願いを叶えてくれると信じられています。
夫の航海安全と大漁を願う、奥様たちの思いが込められているんですね(^^★


数年前、某テレビ局の番組でも取り上げられたそうです。
男性撮影スタッフがそれなりに期待して?行ったところ、女性たちの平均年齢が65歳と聞いて落胆したそうな。
ところが逆に、「あんたは熟女の魅力がわかっとらん」と女性達から説教されたというエピソードが残っています。

ところが、実はこのような習俗には、笑って済ますわけにはいかない深い伝統があるようです。

まずは、真逆の伝統。

山の神は女性で、男が好きだとされます。
山の中の木を削って男根を模した物を置いておくと猟が上手くいくとか、山に入る時に立ち小便をして陰部を山神に見せておくとけがをしないなどと言われていたそうです。

実際、熊野の山中で事故が起きると、山人は山神をなだめるために男性器をみせたり、小便をして再発防止を願ったりしました。

あるいは壱岐島の「塞神社由来」によると、明治末期までは壱岐島に上陸した男達は男根を女神に見せないと怪我をするといって、塞(さい)神社で一物の御照覧を願ったと書いてあります。

なにか明確な由来があるようで、これらを単に下品な風習とだけ考えていては、本質がスポイルされてしまいます。

そこでネット論文を探していたら、こんな記述を見つけました。


学習院大学人文科学論集ⅩⅩⅣ
深沢 佳那子
記紀神話における性器の描写
――描かれたホトと描かれなかったハゼ――
アメノウズメが神々を笑わせるためにそのホトを露出したことについて、松村武雄氏はホトが邪気を駆除する力を持っていることを前提に、この舞が呪術的意味を有しているとした(19)。「ホトが邪気を払う説話」は世界的に見られ(20)、「ホト」と「笑い」の両方に邪気を払い幸福を呼ぶ何らかの力を見出すとする説は既に定説である。


たしかに巷間では、
「天岩戸神話でアメノウズメという女神がストリップダンスをして、男の神様達が大喜びして笑った」などと俗に言われます。

これらは、ホト(女性器)が邪気を払い幸せをもたらすという世界的な信仰のひとつだったのです。
したがって、足摺岬の漁師の妻が、大漁と夫の無事を祈って着物の裾をめくるのは、極めて伝統的で筋の通った信仰だということになります。

おそらく全国各地にあったこの信仰を守るのが、もはや足摺くらいにしか無いと考えるべきでしょうね。


 ☆


しかしこの神社には、まだまだ気になることがあります。



神体山信仰と島嶼信仰か?

鳥居を通して見る景色がこれです。


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「本殿の背後にある山は神体山」という原則で言えば、背後の突出した山は神の依り来る聖なる山だということになります。


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上は、駐車場と竜王宮を結ぶ石段ですが、この道は神体山らしき山の右肩を通ります。
そこには、祠の跡がありました。

石垣で基壇が築かれ、かつては背後の何かを祀っていたようです。


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さらにその背後の斜面には、巨大な城壁とも呼ぶべき石積みが確認できました。


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なんでしょう、この岩壁は? 
この上に、祀るべきものがあったのか? 



さらに鳥居の反対側の海を見ると、尖った岬の先に、臼碆(うすばえ)でしょうか、岩礁がうまく位置しています。
島嶼信仰の典型的なパターンでしょう。


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海の彼方から来た神霊は、まずここに来臨するという信仰があっても不思議ではありません。
ひょっとすると臼碆と神社と神体山は線上に並んでいるのでしょうか。



謎めいた「龍の岩」

さらに極め付きは、鳥居前のこの岩です。


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龍にしか見えません。

自然石?
それとも岩を彫ったのかコンクリートで塗りつけたのか?

ネットには情報がありません。


  ☆


ここは、単に岬の突端だから、海から来る龍宮の神様を祀ったんだろうというだけでは済まない、かなり複雑な祭祀構造があるように思います。

この沖合い一帯は、和歌山(印南・切目)の漁師が最初に発見した「鰹漁場」で土佐鰹節製造のゆかりの漁場です。
さらに黒潮が沖縄や鹿児島から運んできた「黒潮文化」も影響しているとすれば、この辺りは決して辺鄙な海岸ではなく、ましてや貧しい漁村でもなく、様々な人々や文化が行きかう多文化混合の海のメインストリートだったかもしれませんね。

土佐清水出身のジョン万次郎は、土佐沖で漁をしていたがゆえに広大な太平洋に漂流し、アメリカ合衆国の捕鯨船ジョン・ハウランド号に救助されます。瀬戸内海ではこんなことはあり得ません。


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海を隔てた異文化の人や文化や信仰が行きかう、足摺(土佐)の海ならではの出来事だと思います。

はたしてここには、古代にどんな神が来臨し、どんな信仰があったのか。

環太平洋という大きなスケールで考えないと、答えは出ないのかもしれないですね。


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コメント

No title

初めまして。石階段を降りて行って崖を振り返った際、強烈な眩暈など感じませんでしたか?
私は20数年前に土佐清水を訪れました。
綺麗というよりはただ圧倒されるような、遠近感が狂ってしまう崖の景色で、立っていられず座り込んでしまったことを覚えております。
それがどこだったのかを調べていて、見残しか竜串だったのかと思っていたのですが、こちらの崖と石階段の画像を見て、あ、ここだ!と、ようやくわかりました。
遠近感が狂う、眩暈・・などの印象は書かれていませんでしたが、
どうでしたか?差し支えなければ下から崖を見上げた際の感想を教えて下さい。

Re: No title

すー 様

コメントありがとうございました。
私は鈍感な方ですが、妻は
太平洋の水平線を見てから振り返ると、覆いかぶさるような岩々の迫力に畏怖感さえ覚えて足がすくんだそうです。
たしかにモザイク的で強烈な色彩と壮大な景観は、見る者に異様な感覚を与えるように私も思います。パワーのある場所なのでしょうね。

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プロフィール

sazanamijiro

Author:sazanamijiro
古代史マニアですが、特に自然神道期の多様な信仰遺跡に魅せられています。

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