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空海の『虚空蔵求聞持法』と明星輪寺

5月11日付『大垣市の明星輪寺・神秘の原像』という記事で、下のように書かせていただきました。


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ひょっとしたら、宝冠を着した虚空蔵菩薩が、下界の衆生を向いているお姿が、この明星輪寺の核心部分かもしれません。(思いつきで勝手なことを書いてすみません。)

明星輪寺のホームページには、本尊の岩屋をパワースポットとして紹介しておられます。
しかしこの虚空蔵菩薩のご尊顔は、パワースポットなどというありふれた言葉ではとうてい表せない、他に類例のない驚くべきものです。虚空蔵菩薩は知恵の菩薩で、人々に知恵を授けてくれるともいわれます。もっと全国から人々が集まって当然の霊場ですね。



勝手なことを書いて、お寺に迷惑が掛からないかと少し心配なのですが、ここは間違いなく現代日本における聖地のひとつでしょう。
ただし、私が疑問に思っていたのは、

なぜ宝冠のようなものを被ったお姿なのか

という点でした。これについて追加の記事を書かせていただきます。



空海と虚空蔵求聞持法

真言密教を日本にもたらした空海は、室戸岬の洞窟「御厨人窟」に籠もって「虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)」という難行を積みました。そしてその最中に明星が口に飛び込み、この時に悟りが開けたと伝えられています。

空海という法名も、この洞窟から見える風景が空と海のみであったことから得たというのは有名な話ですね。

そもそも「虚空蔵」はアーカーシャガルバ(「虚空の母胎」の意)の漢訳で、虚空蔵菩薩とは広大な宇宙のような無限の智恵と慈悲を持った菩薩、という意味なんだそうです。

そのため智恵や知識、記憶といった面での利益をもたらす菩薩として信仰され「虚空蔵求聞持法」によって、あらゆる経典を記憶し、理解して忘れる事がなくなるといわれます。

では、「虚空蔵求聞持法」という難行とは、いったい何をする修行なのでしょうか?



「虚空蔵求聞持法」の方法と意味

それは、

「ノウボウアキャシャギャラバヤオンアリキャマリボリソワカ」

という真言を100日間に100万回唱えるという修行法です。

「座って真言を唱えるだけなら、千日回峰行に比べて楽勝だな!」などと思いそうですが、一日一万回、実際にはかなりの荒行らしく、途中で亡くなったり、発狂したりすることも結構あると聞きます。

さて、ここで問題となるのは、この真言の意味です。

『ナウ ボゥ アキャシャ ギャラバヤ オン アリキャ マリボリ ソワカ』
 
これを訳すと

『華鬘蓮華冠をかぶれる虚空蔵に帰命す』

なのだそうです。もっと分かりやすくすると、

『五智宝冠という冠を被った虚空蔵菩薩を信じて身命を投げ出して従います』

という意味なんだとか。五智宝冠は金剛界と胎蔵界の中央に鎮座する五如来を表しています。

もうお分かりいただけたと思いますが、「宝冠を被った虚空蔵菩薩」というのはもう固有名詞に近い言葉なのです。

ですから、明星輪寺のご尊顔が冠を被っておられるのは理にかなっていることになります。
そして金星をシンボルとする虚空の仏様で山頂ですから、下を向いたお姿なのだと思います。



金生山の古代信仰と「白色」

仏教が浸透する前、この山にはすでに白い石灰岩の磐座を神の座とする原始信仰があったものと思います。

念のため「白色」の例を挙げます。

白馬や白蛇など、白色は神またはその使者眷属の色です。

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これは、奈良の春日大社の白い磐座。

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福島県郡山市の「鹿島大神宮」は、白い巨大なペグマタイトがご神体でした。

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鳥取市福部町の坂谷神社は、本殿背後の磐座に白い筋が無数にあります。

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また石灰岩の白い露頭に限っても、そこに多くの信仰が見られます。

京都府舞鶴市字吉坂の岩窪稲荷は、苔で分かりにくいものの、白い石灰岩の露頭です。 
しかも「岩窪稲荷大明神は白狐なり」との言い伝えがあります。

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同じく舞鶴市寺田の岩上神社。乾燥した季節なら、かなり白いと思います。

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おそらく明星輪寺の内陣にある石灰岩の洞窟も、周囲の白い石灰岩の中心として、古くは原始神道の聖地として祀られていたのではないでしょうか。

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古くから神としての「顔」も認識されていたでしょう。そしてその聖地性ゆえに、仏教が接ぎ木されてお堂が建立された時、少し手を加えて王冠を着した虚空蔵菩薩に仕上げたのではないかと勝手な想像をする次第です。


この明星輪寺、規模壮大な絶景があるわけではありません。しかし日本全国何百か所も、こういうところを探訪してきた私は思います。
ここは日本の根源的な伝統信仰とは何かを、神秘のベール越しに垣間見せてくれる、まさに「稀有な聖地」でした。

   (合掌)


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Author:sazanamijiro
古代史マニアですが、特に自然神道期の多様な信仰遺跡に魅せられています。

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