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源氏物語 落葉の宮・晩秋の黄色い絨毯を踏んで

京都市右京区の高雄神護寺から周山街道を北上し、小野郷に入ると、鄙びた山里に佇む岩戸落葉神社があります。

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岩戸落葉神社は小野郷の産土神で、岩戸社と落葉社の二社からなります。鳥居と拝殿を共有していることから岩戸落葉神社と呼ばれていという、珍しいお社です。
岩戸社は稚日女神(わかひるめのみこと)、彌都波能賣神(みづはのめのかみ)、瀬織津姫神(せおりつひめ)の3柱の女神を祀り、落葉社は源氏物語「柏木」の巻に登場する「落葉の君」が隠棲したことに因んで祀られたと伝えられています。

そして「落葉」の名のごとく、秋は銀杏の黄色で美しく染まります。

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「万葉集」に詠まれているモミジは、「赤い葉」を詠んだものは5首しかなく、残る歌の125首は黄色い葉を詠んでいるといいます。去りゆく秋に、万葉の時代の晩秋を味わうことができました。


さて、「落葉の宮」とは、『源氏物語』に登場する朱雀院女二の宮のことです。の架空の人物ではありますが、物語では夫の柏木が亡くなった後に、この小野郷に母と共に隠棲する設定となっており、その縁でいつしか落葉社の名と共に祭神として祀られるようになったらしいのです。

それにしても「落葉の宮」という名は、夫である柏木が詠んだ歌にちなむものですが、「宮の異母妹である女三の宮よりもつまらない女」という気の毒な意味が含まれています。結婚した夫が、実は美しい妹の方が好きで、おまえなんか「落葉」レベルの女だなんて、実に可哀そうな話です!!

その上、「落葉ハラスメント」の柏木が亡くなったあとは、その親友であった夕霧に見初められ、本人の意志に反して半ば強引に再婚のためにこの地を離れることになります。見初められること自体は、魅力的であるということで悪い話ではありません。しかし共に隠棲した母の一条御息所は、夕霧が娘を弄んでいると思い込み、恨みを残してこの地で没していることから、やはり気の毒としか言いようがありませんね。

日本の伝統では、悲しみや恨みを残して世を去った人には、神として手厚く祀るのがセオリーです。まあ源氏物語というフィクションではありますが、それでもやはりこのお社で「落葉の宮」とお母さんにお参りするのは理にかなっています。


で、もう一つの「岩戸社」の方ですが、旧社地には「神輿岩」があったと伝えられます。今の新社地では、岩戸や磐座に類するものはないかというと、いろいろありました。

まず本殿背後は、オーバーハングした岩壁です。間違いなく磐座でしょう。

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さらに本殿前にも、いわくありげな巨石。

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その横の方にもこんな岩が。

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今はもう由来が伝わってないのでしょうが、神の座はいくつもありました。まさに伝統ある古社です。


というわけで、ここは秋色絨毯と磐座が両方楽しめる、静かなお社でした。


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Author:sazanamijiro
古代史マニアですが、特に自然神道期の多様な信仰遺跡に魅せられています。

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