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昭和レトロ・藤本浩一さんと『磐座紀行』を偲ぶ(いったん最終回です)

「全国の磐座の数は四百座を越え、五百座に達するかもしれない」
と40年前に予測されたのは、『磐座紀行』(向陽書房)著者の藤本浩一さんでした。


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その藤本浩一さんが亡くなってから、昨年で40年。そして今年が生誕120年という節目の年でした。
司馬遼太郎さんの「生誕100周年」に比べると、ほとんど関心を持つ人もないのですが、この本を読んで「磐座」という言葉を初めて知り、「こんな世界があるんだぁ!」と日本の信仰文化に興味を持った「昭和の青年」は多かったと思います。

私はこの本の121ページにある、兵庫県姫路市にある山神社の神体山を見て興味を持ち、「そうか、三輪山や太郎坊山以外にも、神体山ってたくさんあるんだ」と、登山靴を履いて登りに行ったことを思い出します。本を読んでから、かなりたってからの事でした。


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私が撮影した、古い写真です。三角形の神体山が、リアルに感じられました。


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藤本浩一さんに会えたら、いろいろお聞きできるだろうな、なんて思っていましたが、この本の発行日が昭和57年9月1日。そして、藤本浩一さんが亡くなったのが、なんとその直後の昭和57年11月23日でした。
私が山神社を訪ねた時には、とっくに亡くなられていたわけです。享年79歳。

最近、姫路に行く機会があり、懐かしい山神社を訪ねました。


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不思議な立石も昔のまま。気にする人もほとんどなく、謎めいています。


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そして、藤本浩一さんが、
形式的にこれほど整った形の磐座を見るのはまれであって、この近辺では第一といえるであろう。
とまで表現された、山神社背後の美しい三角形の神体山と、盛り上がった磐座群。それに再会したくて、膝の調子が良いこともあり、中腹まで久しぶりに行ってみようと登り始めました。


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ところが山に入ると、灌木が生い茂り、視界はほとんどありません。


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本に写っていた磐座まで到達しましたが、神体山はほぼ見えません。
藤本浩一さんが感嘆の声を上げた、美しい伝統信仰の景色は、もうそこにはなかったのです。


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何の達成感もなく、時の流れに一抹の寂しさを感じながら、しかもなぜか痛み出した膝をかばいながら斜面を下りました。

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『磐座紀行』のP.106には、「太郎坊宮・阿賀神社」も載っています。


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その太郎坊山の麓には、円墳のように整った紅かす山があります。


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かつては、低い灌木だけの、どこからでも登れる穏やかな丘でした。下からも、頂上の磐座が見えていたのです。


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ところが、やはり徐々に樹木が成長し、二十数年前の頂上磐座ですらこれです。


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今では高木が生い茂り、登り道さえなくなっていました。

年寄りのボヤキになってしまいましたが、もちろん今もそれほど変わらない場所もあります。
前記の山神社の西側、約700mの所に鎮座する、白鬚神社。


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背後の神体山は、今でもはっきりとそびえ、磐座あるいは磐境らしい露岩群が見えています。
下は、今から十年ほど前。

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うーん、よく見比べると、やはり緑が増えていますね。登れないかもしれません。

  ★

『磐座紀行』の発行は昭和57年(1982年)でした。
この年の2月に桑田佳祐と原由子が結婚。さらに4月には山下達郎と竹内まりやが結婚しています。(まあ、どうでもいい話ですが。)
政界では、鈴木善幸首相が退陣し、第1次中曽根内閣発足。中曽根さんは、「君が代」のさざれ石について、以下の説を推進した政治家です。

ウィキペディア「さざれ石」より

岐阜県は、同県を「君が代」発祥の地だと吹聴している。伊吹山を構成する古生界の石灰岩が大小の角礫となり固結した石灰質角礫岩を、同県在住の学識経験のない愛石家が、1961年(昭和36年)に同県春日村の山中で俄かに「発見」し、この石こそ「君が代」にあるさざれ石だとする自説を発表した。この説は、おそらく春日村には惟喬親王の家人が居て、おそらくその家人が石を見て「君が代」を詠み、おそらく惟喬親王に伝わり古今和歌集に掲載されたのであろうという、想像と願望からなるもので、史料は一切ない。しかしこれを以て、1977年(昭和52年)に春日村と岐阜県が相次いでこの石を天然記念物に指定したことから、まことしやかな話となった。岐阜県は、この石を「君が代」に詠われたさざれ石だとして、国体にゆかりある先に、知事らの名で積極的に献じている。


旧春日村の「さざれ石公園」には、『石灰質角礫岩説』という日本人の伝統信仰に基づかないさざれ石が、中曽根総理の名と共に置かれています。


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以前にも紹介したパターンですが、『磐座紀行』と同年(昭和57年)、野本寛一先生が『石と日本人』 という書籍を発行されています。


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洞窟信仰と窪石信仰、形状石と日本人、禁忌と石、ストーンサークル、神籠石、霊石信仰など、さまざまな民俗をくわしく紹介されていました。

その翌年には、朝日新聞社の『石の声』が出ます。


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これは朝日新聞の「こころのページ」(大阪)に、昭和55年1月から57年末の3年間にわたって、各地の石の信仰や伝承を集めて連載されたものです。磐座や巨石信仰もたくさん掲載されています。

また、『磐座紀行』発行の1年前には、『紀元前のアメリカ』 バリー・フェル著が出ます。コロンブス以前、それも紀元前千年以上前から、イベリア・ケルト人、フェニキア人、バスク人などが北アメリカ各地に移住していたことを、謎めいた神殿や巨石文化から立証したものでした。


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この本には、思い出があります。
昭和の頃、大阪府茨木市の新屋坐天照御魂神社(にいやにますあまてるみたまじんじゃ)に行くため、東京から来られた大和書房の大和岩雄氏と、阪急茨木市駅で待ち合わせをしていました。
私が車で駅前に着くと、大和氏が駅前ビルから小走りに出てこられ、「こんな面白い本を見つけたよ」と見せていただいたのが、この本だったのです。東京の出版社の社長が、地方の駅前書店で本を探す光景を想像すると面白かったです。それほどインパクトがあったということですね。

同じく1981年(昭和56年)の7月31日には、大和書房の『東アジアの古代文化』誌に
「特集 巨石文化と古代信仰」が出ます。


さらに2年前の昭和55年には、『日経サイエンス』の表紙がコレでした。


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ヨーロッパに見られるメンヒル(立石)文化ですね。
日本ではなぜか関心が薄いのですが、巨石文化についてヨーロッパではしっかり研究されています。

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こんな流れの中で、磐座や巨石文化を守備範囲の一つとする、同好のブログもたくさんありました。しかし平成20年ごろからは、いつのまにか廃業?するブログが増えていったように感じています。時代のニーズから、この分野がズレてきたのでしょうか?
このブログでは、日本人の精神的なルーツを、神社仏閣や神体山へのフィールドワークを通して探ってきました。写真はたくさん載せたので、少しはリアルな現場の雰囲気を楽しんでいただけたかもしれません。
しかし、毎日必ず読んでいただき、励ましのクリックもしてくださる方は、十数人ちょっと。どこのどなたかは分かりませんが、いつも感謝しております。たとえ10人でも、記事を楽しみにしておられる方があるのなら、新ネタを見てもらおうと、なんとか頑張ってきました。さらにわずかな方々ですが、わざわざコメントを書いて下さる方々に励まされ、なんとか二日に一度の更新を続けてきました。

しかし最近は、総合的に見て記事への反応も薄くなり、同時に新ネタの確保も困難になっています。
というわけで、充電のため、しばらく記事を休ませていただくことに致しました。
そのうち新装開店?するとは思いますが、とりあえず今まで毎日読んでくださった皆様に、厚くお礼申し上げます。


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コメント

おはようございます。

毎回楽しく拝見してきました。
珍しい「岩」「巨石」などと、神社の紹介記事。

再開を期待しています。

ゆっくりと写真や調査をしてください。

Re: おはようございます。

one0522 様

早々と暖かいお言葉をいただき、ありがとうございました。
しばらくはのんびりネタ集めでもして、ご期待に沿えるよう頑張ります(^^♪。

No title

他にはないブログで、写真の豊富なこと、その一枚一枚が私が初めて目にするものばかり。いっぺんにこんなに見せてしまうのはもったいないと思っていました。

野本先生は「しずおかトンネル物語」の中で、「リニア中央新幹線は八割がトンネルだという。利便性や科学技術を否定するつもりもないし、時計の針を逆に回そうというものでもない。しかし、この道を無限に直進すればよいとも思わない。利便・効率至上の暮らしの中で失ってきたもの、忘れてきたものについて考え、その補いをつけることも実践しなければなるまい」と。

でもそう言いつつ、「この国の文化土壌も広い意味での教育観・教育力も衰えてきているのではないだろうか」と書いていました。知人の哲学や人文学の研究者たちも嘆いております。

再開をお待ちしております。

No title

毎日更新されているかチェックして、更新されていたら楽しみながら驚きながら拝見していました。
磐座学会?会員様でしょうか?
全国の磐座に足を運んでいる第一人者様だと思います。
少し休憩されて、出来れば都道府県ごとに纏めて頂いて…さらに希望は簡単な地図を付けて頂いて、そして書籍発行して頂ければ是非購入させていただきますので宜しくお願い致します。

またお会いできるときを楽しみに^^

かなりのハイペースで掲載され、まるで知らなかった世界を知ることができ、毎回とても楽しみです^^ 
どうぞ、ご自身のペースで再開なさってください。
毎日見に来ます^^
いつも、どうもありがとうございます。

Re: No title

ちから姫様

励ましをいただき、少し元気が出ました(^^♪
「利便・効率至上」といえば、今朝の羽鳥慎一モーニングショーでダイハツの事件が取り上げられていました。高度成長期のモデルから抜けられていない、なんてコメントもありましたが、現場の実態をしらない幹部の「利益・効率至上主義」なのでしょうね。かつて宇井純さんが「同じ流域でも魚をあまり食べない集落には水俣病は発生していない。現場へ行けばわかることだ。」と、現地調査も実施せずに「腐敗アミン説」を発表する学者たちを批判しましたが(直接聞きました)、結局日本の社会はそれほど変わってないのかもしれませんね。野本寛一『神と自然の景観論』の解説で赤坂憲雄さんが「この人は今も、野や山や里を精力的に歩き続けている。その歩行のゆく末すら、定かではない」と評しましたが、野本さんもまた、その現場、その風土に生きる人々や文化を身に染みて知っているからこそのリニア論なのでしょうね。

Re: No title

小僧様

イワクラ学会には所属していませんが、このブログの開始以前には、イワクラ学会の方と直接話をしたりメールのやり取りをしたことがあります。
都道府県ごとに分ける簡単な方法はないかと、昨夜少しやってみました。ブログ右側に表示される「カテゴリ」を都道府県別にしたら便利だと思い、いくつかの記事を実際に訂正したところ、できなくもないなと思いました。いろいろ工夫もいるので、またぼちぼちやってみます。なんせITが苦手な昭和世代なもので(^^♪



Re: またお会いできるときを楽しみに^^

すずめ四季様

前回同様の優しいお言葉、お心遣い痛み入ります。
「鳥と違って愛想も表情もない岩なんだから、素敵な写真なんて無理だよね」なんて失礼な居直りと共にシャッターバシャバシャ押していますが、貴ブログを拝見すると、やはりもうため息しか出ません。岩の個性や表情が撮れる腕前を目指して、ちょっぴり修行致します(^^♪

私はこちらのブログを知ってまだ一年か二年ほどですが、いつも更新を楽しみにしていました。
磐座の情報に関しては質・量とも日本一のブログですね。特に宮島の対岸にかつてあったという不思議な岩の写真などは極めて貴重な情報だと思います。
実際にこの目で見たかったなあ…。
またいつかブログが再開される日を楽しみにしています。

Re: タイトルなし

悠 様

いつもありがとうございます。記事を書くにも、何だかんだと間接的なものまで詰め込みすぎて、半日くらい時間がかかっていました。そのうえ最近はなかなかネタ収集が難しく、簡単に行けるところは行きつくしたという実感です。
ただ、年末に遠出する予定があり、興味深いネタもありそうなので、しっかりとネタ集めが出来たら、またいつか再開します。その時はよろしくお願い致します(^^♪

再開を待っています。

貴サイトを知って1年足らずですが、毎回の更新が楽しみで実際に記された場所には足を運んでみたりと登拝の参考にさせて頂いていました。
最終回の記事の日にパソコンが固まってしまい、お礼が遅くなってしまったことお詫びいたします。
また再開を心待ちにしております。
宜しくお願いします。

再見をお待ちいたします

サザナミ様、長らくお疲れ様でした。心から御礼を申し上げます。
還暦を過ぎると若い頃のように無理ができなくなるし、身体もいうことをきかなくなります。齢をとると、物を覚えず、思い出せず、身体は動かず、三つのずの三ずの川をうろうろするようになるらしいこと、私も身をもって体感しています。本人は変わっていないつもりですが、うちの嫁はんに言わせれば十分爺さんだそうで。
毎日の更新を見られないのが本当に残念ですが、どうぞお休み下さい。再開があるのを、首を長くしてお待ちしております。

Re: 再開を待っています。

あやこ様

心が和むコメントありがとうございます。
実は今、所用で佐賀県に来ております。せっかくの機会なので、少し神社仏閣を徘徊しまして、写真も撮りました。またお見せできる時も来るかと思いますので、その節はよろしくお願いいたします(^^♪

Re: 再見をお待ちいたします

鯨 様

いつもしっかり読んでコメントをいただき、ありがとうございます。ずいぶんと励みになりました。
気分だけはワンゲル青年なのですが、山道では膝が痛い腰が重い動悸がするの三重苦。まあ車で横付けできる神社仏閣を探して、ネタ貯金をしておきます。

No title

こんばんわ。
普段なかなか行けない場所で、遺跡、古墳もありでとても興味深く読ませて頂きました。
また再開されることを楽しみにお待ちしています。

Re: No title

kame-naoki 様

温かいコメントありがとうございました。まあぼちぼちやって行こうかと思っています。
ところで、リハビリの方は順調でしょうか? 「カメさんと遺跡」もまた、元気に再開されますようお祈りしております。
それでは、よいお年を(^^♪

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プロフィール

sazanamijiro

Author:sazanamijiro
古代史マニアですが、特に自然神道期の多様な信仰遺跡に魅せられています。

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