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遠野物語の『卯子酉様』と柳田国男と巨石文化

卯年の「」、大切なお社を忘れておりました。
それは、『卯子酉様(うねどりさま)』。

神話と伝説の里、岩手県遠野市にあり、『遠野物語』にも登場する由緒ある神社です。


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かつて一帯は大きな淵で、そこに住む「淵の主」に男女の縁を祈願すると、不思議にかなったと言います。
祠の前にある木々の枝に、左手だけで赤い布を結びつけることができたら、縁が結ばれると言われていて、境内は赤一色。


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  ☆

朝日放送「ポツンと一軒家」が、単に山奥の家を紹介するのではなく、そこに住む「名もなき人々」が背負ってきた「人生」を伝えていることが人気の秘密ですよね。

『遠野物語』もまた、怪異譚とともに、山里に住む庶民の重く悲しい人生などを、ほんの数行で見事に伝えています。


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そして私が、ずっと心の中で想像し続けるのが、
白望(しろみ)の山に行きて泊まれば、深夜にあたりの薄明るくなることあり。秋の頃茸を採りに行き山中に宿する者、よくこの事に逢う
という白望山。

五月に萱を刈りに行くとき、遠く望めば桐の花の咲き満ちたる山あり。あたかも紫の雲のたなびけるがごとし。されども、ついにそのあたりに近づくことあたわず

なんとも不思議で奥深いメルヘンですよね。

ちなみにこんな話も。

旧家にはザシキワラシという神の住みたもう家少なからず。この神は多くは十二三ばかりの童児なり。

あちこちに座敷わらしはいたのですね(^^♪
女の子の座敷わらしもいたそうです。


ちなみに下は、柳田国男の故郷である兵庫県の福崎に住んで?おられる河童さん(^^♪


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話のネタなのですが、どうしても買う気にはなりませんでした(>_<)


この付近には、ほかにもろいろ妖怪変化さんがおられます。


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ついでにもう一つ。(遠野物語第九九)

・・・副二という人は海岸の田の浜へ婿に生きたるが、先年の大津波に遭いて妻と子を失ひ、生き残りたる二人の子と共に元の屋敷の地に小屋を掛けて一年ばかりありき。

から始まるこの小文は、まるでシェークスピアレベルの重みを感じるのです。

夏の初めの月夜に、この人は少し離れた波打ち際の便所に立ちました。
霧の夜でしたが、そこに男女二人の影があり、よく見るとその一人は亡くなった妻でした。あとをつけて名前を呼ぶと、「死んでこの人と夫婦になった」というのです。相手の男は、

自分が婿に入りし以前に深く心を通わせたりと聞きし男なりし

子どもが可愛くないのかと言うと、女は顔の色を変えて泣きます。
しかし、死者の夫婦である二人はそこから足早に立ち去り、副二は夜明けまでじっと道に立って考え、朝に帰ってきますが、その後長く患ったと記されます。

妻を失っただけでも呆然とするのに、その妻があの世で、同じように津波で亡くなった昔の恋人と結ばれている・・・。
結婚などは当人の意思に関わりなく、親と仲人が決めた時代です。実は好きな人がいたなどというのは、どこにでもある話でしょう。
仕方ないとあきらめても、しかし現世には子どもがいるという、生き残った人生の重い不条理。
私は福二さんのその後を考えると、何とも言えない気持ちになります。

まあ、わたしがまとめると俗っぽくなりますが、格調高い柳田国男の文で読むと、たった数行でまるで分厚い小説を読んだような気がするのです。遠野物語の魅力は、単に妖怪や幽霊がたくさん出てくる面白い昔話というレベルではないことが、この話でも分かると思います。

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  ☆

ウィキペディアの「柳田についての評価」には、こう記されています。

柳田の日本民俗学の祖としての功績は非常に高く評価できる。柳田の研究に影響を受けて民族学者となった宮本常一は、柳田同様にフィールドワークによる民俗資料収集を基礎とし、多くの研究を残した。さらに宮本の研究は、網野善彦によって歴史学の分野でも注目を集めた。

柳田国男に宮本常一に網野善彦、すごい人たちですね。
これからの日本に、このスケールの研究者が新たに現われるとは、私にはとても思えません。
たしか文化人類学の石田 英一郎さんだったと思いますが、柳田国男を軽々しく批判する研究者に対して、
「人は、自分の心にある鏡の大きさでしか、相手を映すことはことはできない」
と、強烈な皮肉を書かれていたことが思い出されます。


下は、「日本一小さい家」と自称する柳田国男の生家。
飢饉のときは一か月間おかゆをすするだけという生活でした。そして、口減らしのために他家に預けられます。


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名もなき庶民の目線にこだわった人でした。

  ☆

最後は、このブログお約束の巨石文化です(^^♪
柳田国男が

綾織村山口の続石は、この頃学者の言うドルメンというものによく似ている(遠野物語拾遺第11話)

と記した続石(つづきいし)。


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遠野物語の第九一話では、こんなことも記されています。

昔遠野の町に、元は南部男爵家の鷹匠だった鳥御前という人がいました。
ある日きのこ採りのために、続石の少し上に入ると、赤い顔をした男女が話をしているのに出会ったのです。

男女は鳥御前を見て手を広げ押し戻すような仕草を見せましたが、鳥御前はひょうきんな人だったため、からかいの気持ちで刀を抜くと、たちまち男に蹴り飛ばされて谷底で気を失ってしまいました。

鳥御前は発見されて家に戻り、事の一部始終を語りましたが、三日間の間病んで亡くなります。


続石は、山神の領域との境なのでしょうか?

最後は、続石のすぐ上にある「泣き石」。


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武蔵坊弁慶が、巨大な岩をこの岩の上に乗せようとしたところ、「自分は位の高い石なのに、他の石の下にされるのは耐えられない」と言って、一晩中泣き明かした。だから弁慶は憐れに思い、岩を今の続石の上に置き直したということです。

他愛ない伝説か、それとも深い意味が隠された伝説なのか、それはわかりません。
いずれにしろ、もし続石がドルメンなら、泣き石はメンヒルだと思うのですが。

  
他にも、不思議な岩の話は結構あります。
妖怪が好きな方も、不思議な話が好きな方も、巨石マニアも、あるいは民俗学発祥の伝説を知りたい方も、『遠野物語』を携えて遠野にぜひおいでください。

私は宝くじを携えて、座敷わらしに逢いに行きます(^^♪


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コメント

東北の巨石文化のルーツ

本当に謎に満ちている巨石ですね。

周辺の遺跡を総合し、それらの巨石文化のルーツに迫っていただければと思っています。

Re: 東北の巨石文化のルーツ

レインボー様

基本的に写真ブログなのに、なかなか現地調査が難しく、困っています。
レインボーさんに元気をいただいて頑張ります(^^♪

柳田國男

柳田國男の生家のある福崎と幼少期を送った利根町。どちらも柳田國男で町おこしを試みていますが、アプローチが全く異なります。『燃える商魂』の関西と『実直・含羞』の北関東。個人的には前者好きですが😂。でも利根町には國男少年が神秘体験をした玉石や、衝撃を受けた間引絵馬とかあります。愚生も実見し興味深かったです。もし未訪問で有れば是非。あっ、巨石コメントがない…。

Re: 柳田國男

こだたん黒耳 様

布川の家々では、なぜ子どもが二人ずつなのか・・・
その疑問に答えてくれた徳満寺の絵馬が、その後の柳田国男の思想を生み出したようですね。
残念ながら、茨城・埼玉・東京はこのブログ記事の空白地帯です。鹿島神宮の要石だけは、就職したころに行って写真を撮ったのですが。
もし茨城周辺に行く機会があれば、必ず利根町にも行ってみます(^^♪

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sazanamijiro

Author:sazanamijiro
古代史マニアですが、特に自然神道期の多様な信仰遺跡に魅せられています。

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