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昭和レトロと樹木信仰

昭和レトロな、銭湯のペンキ絵です。いわゆる「白砂青松」ですね。


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(ウィキペディアより)

ペンキ絵の起源としては、大正元年(1912年)に東京神田猿楽町にあった「キカイ湯」の主人が、画家の川越広四郎に壁画を依頼したのが始まりであるとされています。その後に類似のペンキ絵が広がったのでしょうが、これには基本の構図がありました。空を背景にして遠くに大きな富士山があり、ふもとには低い山並みや松、川などの水辺があるというスタイルです。

ところが、これらのベタなペンキ絵に描かれた松は、実は「神の依り代としての当て木」であることを、近畿大学文芸学部特任教授時代の野本寛一先生が論じられています。


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「白砂青松」は日本人の好む原風景の一つである。「白砂青松」の「松」、海辺の松原には、多く秀でた「当て木」がふくまれていたのである。そして、白砂青松の入江に帆かけ船を浮かべ彼方に富士山が見えるという図柄は「風呂屋のペンキ画」や「田舎芝居の背景画」としてしばしば蔑視されることもあったが、そこには民族の郷愁がこめられていたのであった。
(野本寛一『神と自然の景観論』より)

ちなみに、能舞台の松もまた、神仏の降臨する依り代でした。


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さらに正月の門松も、名前の通り松が主役で、年神を家に迎え入れるための依り代でした。


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(ウィキペディアより)


なお江戸時代の門松は現在と異なり、松の先を切らずに地面からそのまま家屋の二階屋根まで届くような、背の高いものが飾られていたそうです。

一方、奇跡の一本松は、東日本大震災で残った陸前高田市のモニュメントです。


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(ウィキペディアより)


単なる岩や家屋ではなく、生命のある松だからこその感動だったと思います。その気持ちの根底には、松に対する日本人の親愛や畏敬の念が横たわっていたはず。

  ☆

さて、関西テレビ「報道ランナー」2022年12月1日放送分に、こんなニュースが流れました。

夜の山里に浮かび上がる神秘 樹齢400年超えの「子授けイチョウ」 初のライトアップ 【和歌山発】
和歌山県に、“ある願い”をかなえてくれるという木がある。和歌山県古座川町の光泉寺にある、樹齢400年を超える大きなイチョウの木。高さはおよそ30メートルもある。2022年は地元の人たちによるライトアップで訪れる人を楽しませている。


そして、太い枝からいくつもの「コブ」が垂れ下がっている様子は、まるで鍾乳洞のようであり、この乳房のようなコブに触ると、子宝に恵まれるというご利益があるとされる、などという内容でした。

この大銀杏は、かつて記事にしたことがあります。


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磐座に、美しく均整の取れたものと奇怪な風貌のものがあるように、不思議な形状の木もまた、神の依りつく「ご神木」として信仰の対象になっていました。

形態異常樹木信仰と呼ばれるものもまた、その一環です。
そんな、バランスの取れた松とは真逆の、奇しき樹木を最後に紹介したいと思います。

まずは、「上兼田の三昧(さんまい)と呼ばれる、かつての土葬墓地の上に育つ木。
まるで龍蛇を想起します。


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生々しいたたりの伝説がある、越木岩神社境内に育つ、人間の腕を思わせる木。


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「人類の初代・伊邪那岐尊のお墓のある神社です」と書かれ、さらに「御鎮座は約七百二十万年前」という天文学的数字の大杉神社にそびえる木。


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その他、それぞれ深い由緒が語られる、不思議な樹木をご覧ください。


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柳田国男は、

この邦(くに)の固有の信仰が、由緒深い霊山・年経る樹木の下や、奇しき形の巌石の上において成長したということもまた事実である

と述べています。

日本の伝統信仰として、霊山(神体山等)や巌石(磐座等)と並んで、樹木(ご神木等)が挙げられているのです。
そういえば、それほど大きくなくとも、しめ縄を巡らせたご神木はたくさん見かけます。磐座信仰に比べると、スルーされがちな樹木信仰ですが、もっと注意を払うべきかもしれませんね。


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コメント

No title

木と岩、いいですね。
誰にも日々成長しているように見える木と、
そう見えない岩を神として大切にした古代人には、
繊細さと鋭さを感じます。

Re: No title

ちから姫様

石長比売と木花之佐久夜毘売の話も、単なる天皇家の寿命の起源説話というだけでなく、根源的な深い意味があるのかもしれませんね。

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sazanamijiro

Author:sazanamijiro
古代史マニアですが、特に自然神道期の多様な信仰遺跡に魅せられています。

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