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亀石と大災害・「大和殺すにゃ刃物はいらぬ。亀の瀬滑るだけでよい」

これは、奈良県明日香村の亀石です。


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ここには、不気味な伝説が語り継がれています。

・・・・昔、大和が湖であった頃、湖の対岸の当麻(たいま)と、ここ川原の間にケンカが起こった。長いケンカの末、湖の水は当麻に取られてしまい、湖に住んでいた沢山の亀は死んでしまった。
この何年か後に亀を哀れに思った村人達は、亀の形を石に刻んで供養したという。今、亀は南西を向いているが、これが西を向いて当麻を睨みつけた時、大和盆地は泥沼になるといわれている・・・・

この伝説が、いったい何を意味しているのかは謎です。
しかし西北方向にある当麻の方を向いたときに、大和盆地が泥沼になるというのは、なんとも不気味です。

 ☆

地図をご覧ください。






オレンジ色が、飛鳥の亀石。

黄色は、とりあえず当麻寺駅(近鉄)です。

亀石が黄色ポイントの方向を向くと、奈良盆地はヤバいことになるわけですね(>_<)

この伝説と同種のものに、顔を赤く塗ると天変地異で島が沈没するという伝説パターンがあります。

別府湾の瓜生島は、島の蛭子神社にあった蛭子像の顔を不心得者が赤く塗った祟りで沈んだとされます。
あるいは、鹿児島県の万里ヶ島。ここでは金剛力士像の顔を赤く塗ったため沈んだといわれています。
高麗島では、石の地蔵の顔を赤く塗ったために、島が沈んだという伝説があるようです
徳島市の四所神社では、狛犬の顔が赤くなって亀島が沈んだとされています。

島に災害が起こるから、絶対に赤く塗ってはいけないと言われているのに、みんなを驚かせてやろうと赤く塗ってしまう。すると本当に沈んでしまった、などというパターンがメインの伝説ですね。
柳田国男説では、中国の古い説話にある「石像の顔色を塗り替えることで島が沈む話」がもとになっているとされますが、はたして真相は?

しかしまあ、「押すなよ押すなよ」と言われても、押して熱い水槽に落下するのがダチョウ倶楽部のお約束。見るなと言われて見てしまうのが『鶴の恩返し』。
やめろと言われると、かえってやってしまうのが人間の性ですよね。

不適切動画が好きな大学生とかが、夜中にこっそり亀石を動かしたら、果たして災害は起こるのか?
マジ、ヤバいかも(>_<)

まあそれは冗談ですが、実は当麻地域の先に、もう一つの亀石がありました。
それが紫色のポイントです。
そして、やはり恐ろしい伝説があったのです。

  ☆

大和川が奈良県から大阪府へと入る地域は、「亀の瀬」と呼ばれます。


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たしかに、付近では亀が日向ぼっこをしていました。


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しかし、「亀の瀬」の由来はこれではなさそうです。
実は、川の中に「亀石」と呼ばれる巨石があるのです。


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この岩を見つけた時、なんとなく亀に似ているとは思いましたが、「それが何か・・」というレベルで、インパクトは感じません。
どこにでもありそうです。
はたしてこれが伝説の「亀石」なのでしょうか?

そこで周囲を見渡し、たまたま民家の前におられた男性に聞いてみました。


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すると、「よく見えるところを案内してあげるよ」と親切に言われます。
一緒に川べりを進むと、見えたのです。
そう、「亀の首」です。


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同じ岩ですが、上からは全く見えなかったのに、なんとも不思議です。

江戸時代後期に刊行された『大和名所図会』にもこの亀岩が記載されています。
そして、この亀岩が動くと、地すべりが起こって大和川がふさがれ、大和(奈良県)に洪水が起こるという伝承があるのです。
大和殺すにゃ刃物はいらぬ。亀の瀬滑るだけでよい」という俗謡まであるのだとか。

ところがここは、実際に地滑り多発地帯として有名でした。
古代に起こった地すべりで大和川がせき止められ、亀の背地区からかなり上流まで湖水状態になっていたこともあるそうです。
大和盆地に降った雨は大和川に集まって大阪湾に流れ出ます。奈良盆地の雨は亀の瀬の谷間を通るのです。ですからここで地滑りが起こるとダム状態になり、それがまた決壊して一気に流れると、大阪に洪水が起こります。

亀石が動くと大和盆地が泥にまみれるという伝説は、決して荒唐無稽ではないようです。亀の瀬の亀石付近には、小さな地滑りは何度も起こっているため、今も改修工事が行われていて、立ち入り禁止になっていました。

こんな場所には、当然神仏に祈る場所があるはずです。
これは亀石にほど近い龍王社。


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災害の要としての巨石磐座信仰、なかなか重要なテーマかもしれません。

  ☆

亀には、意外にも神話伝承や不思議な巨石信仰が伴います。

例えば、岡山市東区水門町にある亀石神社(かめいわじんじゃ)。
瀬戸内海に面した海岸に、ご神体の亀石が玉垣に囲まれて波間に浮かんでいました。


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由緒では、神武天皇が東征の途中、速吸門(はやすいのと)に至った時、大きな亀にのった釣り人(字豆毘古命)が現れて案内をし、そのときの亀が岩となったと伝えられます。 
亀石の長さは2m弱で、この玉垣の中にある小石でイボをこするとイボが落ちるといわれ、お礼に石を倍にして返す民間信仰が残っているそうです。

また江戸時代には、岡山藩が岡山城下の後楽園へ船で移そうとしたところ、旭川河口で動かなくなり、夜中に光りだしたため、元に戻したという話も伝えられています。

単に亀に似ているだけという存在ではなさそうですね。


下は、岡山県笠岡市の瀬戸内海に浮かぶ高島の亀岩。


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この横には、子妊石(こはらみいし)という不思議な巨岩があります。


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良縁・安産・子授けの霊神として崇められていて、巨石信仰が今に続く典型的な例だと言えます。


さらに、兵庫県たつの市揖西町中垣内の山中にある亀石。


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近くに鎮座する井関三神社(いせきさんじんじゃ)の奥宮には、ニギハヤヒを祀る立石があります。
典型的な巨石・磐座信仰です。


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  ☆

古代中国では、カメの甲羅を用いて神託の儀式を行っていました。
日本の大嘗祭でも、カメの甲羅を使った古来の占い「亀卜(きぼく)」が行われたことは記憶に新しいと思います。
そもそも亀には、私たちが思っている以上に神聖な観念があるようです。

それにしても、飛鳥と亀の瀬のダブル亀石、どこかで連動しているのでしょうか。
なにか秘められた関係があるのかもしれませんね。


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Author:sazanamijiro
古代史マニアですが、特に自然神道期の多様な信仰遺跡に魅せられています。

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